11 eleven

11 eleven

11 eleven

積読消化。短編集。安定の津原。

「五色の船」
腕の無いもの、足の無いもの、かつて身体が2体あったもの、言葉が出ないもの、
そういう家族たちが「くだん」を求めて旅にでる。
悲しい夢とくだんの予言。
美しさの最果て。

「延長コード」
延長コードにつきる。
何はつけても延長コードにだけは困らない。
娘は、給水塔に上ったのだろうか。どんな景色を見ていたのだろうか。
そして、のこされた延長コードの山。

「微笑面・改」
女の顔が見える。
気のせいではなく、はっきりと眼球に女の顔が見える。
某日には触れるように。
某日にはくっついてしまう。
正体は、とうに知っている。

創っては壊し壊しては創りの人生を自認してきたが、正しくは、
創っているつもりで何もかも壊し続ける人生であったかもしれない。

「手」
FM放送からこっそり録音した、ケイト・ブッシュ
ちぎられたマンガの破片で新しい物語を作っているんだろう。
コーラで髪の色を抜いているという友人に家出を持ちかけられる。
ばかばかしさはある。でも、「わたし」は子供だ。

ねえきみ、だから暗闇になんか、なにも期待しちゃだめだよ。幽かに音が聞こえても、小さな光が見えてても、そこには本当は、なにもないんだ。
ただ、ゆうううっくりな時間だけはある。そのくせぼくらを引きすりこむときだけは素早いんだよ闇は

わたしたちは、いつ引きずりこまれたのかも、知れない。