存在しない小説

存在しない小説

存在しない小説

存在しない小説とは何か、ということ。
セイコーのもとには、各地からいろいろな「存在しない小説」が届く。
「あたし」が特に良い。

サルマはこちらに覆いかぶさってきて、あたしの眼鏡のレンズを右左と順番に指ではさんで無造作にこする。指のあぶらのことなんか気にしないし、眼鏡がずれてもおかまいなしだ。サルマが伸ばした腕は傘の外に出ていたので雨が降りつけて、袖がびしょびしょになっている。

「変な女の子」を表現するときにこんな書き方をするなんて。
この世にある小説はすべて存在しないとも、言える。