怖い俳句

怖い俳句 (幻冬舎新書)

怖い俳句 (幻冬舎新書)

倉坂鬼一郎の選出による怖い俳句のアンソロジー。
選んだ俳句について、やさしく解説してくれる。
解説というか、「こうだったら怖いかもな〜」という感じで、
俳句のおもしろさを伝えてくれる大変良い本だった。
俳句を好きになるきっかけのような本になってほしいとのことだし
小学生とかが読めば良いと思う。

また、個人的に俳句に興味を持ち始めているところなので
大変ためになった。
俳句というのは、かなりの可能性がある。
夢を表現するのにこんなに良いものは無い。
また、4コマに似ている。
4コマよりも苦労しそうだが。

新書は普段ほとんど読まないが
黄色が心地良い。
と思ったら
鈴木成一デザイン室だった。

以下は気に入った俳句、自分用のメモ。。

おそろしきひとつ家もなしけふの月
堀麦水

稲妻に道聞く女はだしかな
泉鏡花

囀りやピアノの上の薄埃
島村元

蟻の死や指紋渦巻く指の上
日野草城

草二本だけ生えてゐる 時間
冨澤赤黄男

半円をかきおそろしくなりぬ
流れつくこんぶに何が書いてあるか
皿嗅げば皿のにおいがするばかり
阿部青鞋

蠅を追ひ死ぬまで見せぬ句を刻む
秋元不死男

遺品あり岩波文庫「安部一族」
幽霊の手ばかり見えてあそびおり
鈴木六林男

葱を切るうしろに廊下つづきけり
下村槐太

びしょぬれのKが還ってきた月夜
真鍋呉男

百年後のいま真っ白な電車が来る
小川双々子

不安な世代完全な形で死ぬ電球
上月章

六月の皿に盛りたる人の顔
栗林千津

ホントに死ヌトキハデンワヲカケマセン
津田清子

底なしの匣に葬る百日草
寺井文子

冬の夕焼けさびしい指が生えた
河本緑石

誰か見ています三角形の中
時実新子

頭上には不吉な紙が揺れている
石部明

門ごとに刃物が立っておじぎせり
広瀬ちえみ

三角形のどの角からも死が匂う
樋口由紀子

音もなく轢かれつづける汝が影よ
沼尻巳津子

全身が尾の憑きものに昆布飾れ
大岡頌司

ありもせぬ盲学校が燃えてゐる
欇津幸彦

フレームを出入りするたび少し死ぬ
永末恵子

府中の猫はこれは嘘だがぜんぶ片目
前島篤志