中国女

昼間眠りに落ちる。

金縛りや、意識が遠のく寸前の、薄目を開けている瞬間など
そういう時に、部屋になにかがいるような気がするときは無いか。
そういったものは大概「見間違い」だ。
棚の上の時計やカーテンが、「赤い案山子」や「黒い海坊主」に見える。

私はそれらの現象の、切り替わる瞬間をついに目撃してしまった。
カーテンが女の腕に変わったのだ。
「あっあれは本当はカーテンじゃないか」
そう思うとまた、ぼんやりとした輪郭のカーテンに変わる。
そうかと思うとまた、はっきりとした「女の腕」が見えてくる。

脳みそが、何かぼやけたものを見たときに、
それを瞬時に「女の腕」だと勝手に判断してしまう。
記憶や記録、妄想の中にある形にすり替えてしまう。
その信号が送られた瞬間、はっきりと「女の腕」が現れてしまう。

「女の腕」と言ってもいろいろだ。
この場合は「水色のノースリーブを着た中国人の女の左腕」であった。
また、もうひとつ見えたものは、
「紙袋を頭にかぶった男」だった。
どんな男かと言うと
まんだらけの紙袋を頭にかぶっていじめられている一之瀬君」だった。
私の脳みそは、そのように判断した。